ことの葉

日々の想いを「ことの葉」にして綴っていきます。

2012年08月

アンテナ

ときどき、何かに「呼ばれる」ことがある。

 

今年2月、鎌倉の大仏さんに呼ばれた。

関西人の私にとって、大仏と言えば奈良の大仏さんだが、

以前からずっと「臼杵(大分県)の石仏と鎌倉の大仏さんを見てみたい」と思っていた。

そこへ、知人から「鎌倉でイベントやります!」との案内があり、

「これは、大仏さんに呼ばれちゃったな~♪」と感じた私は、

即決で「行きます!」と返事をし、

念願の鎌倉大仏とのご対面、そして、初の鎌倉散策が実現したのだった。

 

もっと日常的で些細な例を挙げると、

何気なくテレビをつけると、昔好きだった歌手が歌っていた。新曲が出たらしい。

あまりにタイミングが良すぎて、「あ、呼ばれたな♪」と思う。

その後、久しぶりに昔のアルバムやライブビデオを引っ張り出して楽しんでみたりする。

 

つい最近では、

たまたま目にした市の広報番組で、「棟方志功展」が開催されていることを知った。

3年ほど前、大阪市内で開催されていた展覧会を諸事情により見逃して以来、

ずっと気になっていたが、なかなか青森の「棟方志功記念館」まで行く機会がなかった。

めったに見ることのない市の広報番組で偶然知るなんて、

やっぱり、「あ、呼ばれた!行かなきゃ♪」と思ってしまう。

行ってみると、想像していたより多くの作品が展示されており、満足のいく内容だった。

 

この「呼ばれた」という感覚を、私はとても大切に思っている。

自分のアンテナの感度を知るバロメーターだからだ。

アンテナの感度が落ちると、途端に何者(何事?)からも呼ばれなくなり、

生来、怠け者で出不精な私は、たちまち引きこもり状態になってしまう。

今年は今のところ感度良好のようだが、
実は、昨年までの数年間はかなり感度が落ちていた。

 

今後は常にアンテナを広げ、好奇心を刺激される情報をキャッチして、

フットワーク良く動き続けたいと思っている。

 

ユミ

読書の醍醐味

読書は、さまざまな発見、気付き、感動、愉しみを与えてくれる。

現実から離れ、空想の世界を旅する愉しみ。

今まで知らなかった世界を感じることができる喜び。

書かれている内容について共感を覚えたときの嬉しさ。

読書を通して得られた興味や関心を広げ、それが次の読書へと連鎖し、

新たな世界の扉を次々と開いていく面白さ。

そういったことが、読書の醍醐味ではないかと思う。


小中学生の頃の私は、1人で本ばかり読んでいた。

友達が少なかったせいでもある。

童話、民話、神話、伝記、SF小説、推理小説、

少女小説(今でいうライトノベル?)、漫画も含めて、

食わず嫌いなく、あらゆるジャンルの本を楽しんでいた。


しかし、出版業界の片隅に籍を置くようになった今、

少女の頃のように読書を楽しめなくなっている自分に気付いた。


日々、ネットや新聞、資料の活字に目を通すのが精一杯で、

読書も仕事に関するものが最優先になってしまっている。

買ったまま、読まずに積んである小説が山になり、雪崩を起こすこともしばしばだ。

これではとても、趣味欄に「読書」とは書けない。


いざ、好きな作家の推理小説を読もうと、久しぶりに文庫本を開くと、

最初の事件が起きるまでが、ひどくもどかしく感じられた。

いつ、どこで、誰が、どのように殺されるのか、

とにかく物語の要となる部分を一刻も早く知りたがっている自分がいたのだ。


仕事として日々膨大な活字を読むうちに、

その文章の要点をいち早く捉え、

必要な部分を嗅ぎ分けて読む癖がついてしまったのだろう。


これでは、だめだ。

物語のなかの世界を自由に行き来できていた少女の頃の私は、

一体どこへ行ってしまったのだろう。


あの頃の私は、

登場人物のネーミング、キャラクター設定、心理描写、

風景の描写、思わず真似して使いたくなる表現や言い回し、

グッとくる台詞、句読点の位置などなど……細部まで。

行間を読むどころか、深読みし、ときには妄想し(笑)、

勝手にサイドストーリーやスピンオフ作品を考えてしまうほど、

物語の世界観に没頭して楽しめていたというのに…。


いつの間にか失ってしまっていた大切なものを、

あの頃味わっていた読書の醍醐味を、

再び取り戻すことはできるだろうか。


いや、取り戻したい。
今、心から、そう願っている。


ユミ



 

残暑お見舞い申し上げます!

まだまだ暑い日が続いていますので、みなさんお身体ご自愛下さいね。


ムクロジ























黄色いスイカ

私が5歳か6歳のころだと思う。もう三十数年前の話だ。

夏になると、まんまるの大きなスイカを提げて、わが家に遊びに来るおっちゃんがいた。

 

“スイカのおっちゃん”は、あまり人付き合いの得意でない父の数少ない友人で、

休日の昼下がりにふらっとやって来ては、父とビールを飲んで談笑していた。

 

いつも急にやって来るのは、わが家に電話がなかったせいで、

当時、私たち家族が暮らしていたのは、

4畳半2間に流し台が付いただけの2階建てアパート、

いわゆる「文化住宅」というやつだった。

 

近畿地方以外に住んでいる方には馴染みがないかもしれないが、

「文化住宅」とは、

19501960年代の高度成長期に盛んに建てられた木造アパートや長屋などの集合住宅だ。

お風呂はなく、銭湯通い。うちの流し台はタイルではなく、セメントだったと記憶している。

各戸にトイレが付いていればいいほうで、わがアパートは共同トイレ。もちろん“ボットン便所”だ。計6世帯が暮らすアパートの1階(しかも屋外!)に、3つの個室があった。

私は2階に住んでいたので、夜寝る前にトイレに行くのがものすごく怖かった。

 

共同トイレの横には、共同炊事場の名残があった。

煮炊きはできなかったと記憶しているが、小学校にある手洗い場のようなスペースがあり、

洗濯板で小物を洗ったり、大きな鍋を洗ったりするときに母たちが使っていた。

 

話を文化住宅からスイカに戻そう。

 

せっかく大きなスイカを丸ごと1個いただいて大喜びしても、

既述したように、ウサギ小屋のようなわが家には、小さな冷蔵庫しかなかった。

たとえ切り分けても、うちの冷蔵庫には到底入りきらないだろう。

スイカをどうやって冷やすのか、幼い私はとても気になった。

 

すると、私の心配をよそに、母は事も無げに

つるべの先に結ばれた桶にスイカを丸ごと入れ、井戸の底へと下ろしたのだ。

共同炊事場の隅には、井戸が残っていたのだった。

 

父と“スイカのおっちゃん”がいい感じに酔い始めるころ、

ほど良く冷えたスイカは切り分けられ、ご近所にもおすそわけされた。

 

井戸水で冷やされたスイカは、甘くてほんとうにおいしかった。

つるべを引き上げるワクワク感もプラスされていたのかもしれない。

 

“スイカのおっちゃん”は、赤いスイカだけでなく、

種なしスイカや黄色いスイカなど、いろんな種類のスイカを持って来てくれたので、

「今日はどんなスイカやろ?」と、割ってみるのも毎回のお楽しみだった。

 

 “スイカのおっちゃん”は、夏以外にも遊びに来ていたのかもしれないが、

残念ながら、スイカの印象が強すぎて記憶にない。

もう一つ残念なのは、

3歳年下(学年では4つ下)の妹に“スイカのおっちゃん”の話をしても、

まったく覚えていないらしく、話が通じないことだ。

 

もうすぐお盆。

そろそろ父と“スイカのおっちゃん”は向こうで再会して、

また二人で一杯やってるかもしれない。

 

今年は、父の仏壇に黄色いスイカを供えてみようと思っている。

                         ユミ

 


スタートダッシュ

人と人が親しくなるには、スタートダッシュが大事だという。

異性、同性、ビジネス関係、いずれにしても、

興味を持った相手、また会いたいと思った相手とは、はじめの数回は間隔をあけずに会い、

一気に親しくなることが、その後の関係を良好にするのだそうだ。

 

確かに、交友関係の広い人や人脈づくりの上手い人を見ていると、

積極的に人と会い、一気に互いの距離を縮めているようだ。

彼ら彼女らは、すぐに打ち解け、飲食を共にし、語り合い、互いを知り、友達になっている。

 

一方、私はといえば、子どものころから友達づくりが苦手で、

いや、苦手というより、あえて自分でバリアを張って、

できるだけ人を近付けないようにして十九歳まで生きてきた。

その後の二十数年は、自分自身とも他人とも適正距離を計りながら、

互いのパーソナルスペースに踏み込まないよう、踏み込ませないよう生きてきた。

今、周りにいる友人も、ゆっくりゆっくり時間をかけて、互いの距離を保ってきた人ばかりだ。

 

これまで自分なりのやり方でやってきて、それはそれでいいのだろうけれど、

人生の折り返し地点を過ぎた今、それでは時間が足りなくなるのが目に見えている。

ここらで苦手なことに挑戦してみるのも悪くない。

 

人間関係だけではない。

私は、何事においてもスロースターターで、

少しずつ少しずつゆっくり事を進めながら考え、だんだん理解していくタイプだ。

 

これからは、すぐ動こう。

興味を持った事柄は、すぐに調べよう。すぐに始めよう。

会いたい人には、すぐに会いに行こう。

 

苦手の克服には時間がかかるだろう。

だからこそ、今すぐチャレンジを始めなくては。

 


ユミ


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